2010年6月16日水曜日

嘉祥の日_6月16日

今日は嘉祥の日。

旧暦6月16日に「嘉祥(かしょう)」という行事がありました。
お菓子を食べて、厄除けと招福を願う儀式で江戸時代には
宮中や幕府でも重要な儀式でした。

江戸城では大広間に約2万個の菓子を並べて、将軍から 大名・旗本に
与えたそうです。大変な数のお菓子です。 準備されたお菓子には寝ず
の番がついたそうです。

その嘉祥にちなんだお菓子が虎屋さんに並びました。
(限られたお店だけです。これは六本木ミッドタウン店)
和をテーマにした虎屋さんの今回の企画展は「京扇子」。いつも素敵な展示です。


<嘉祥饅頭3個入り>
(左から「和菓子の日」」「招福」「嘉祥通宝」という名前)




この儀式は明治以降廃れてしまい、昭和54年に全国和菓子協会ではこの日を
「和菓子の日」と定めたそうです。

<嘉祥菓子7ヶ盛>
これは江戸時代末期に虎屋さんが御所に
お納めした嘉祥菓子を再現したものだそうです。

<福こばこ>
縁起の良い3種の生菓子


起源については、基本的には「不明」だそうですが、嘉祥年間(847~851)に
発祥したといわれています。包結記の著者、伊勢貞丈は「貞丈雑記」の中で
嘉祥の日について

「~省略~そのはじめたしかならず。東山殿よりはじまるという説、信じがたし」

と書いています。
貞丈は信用できるいくつかの文献で起源の確認できなかったので、諸説の一つを
「信じがたし」としています。 「包結記」の結びについても「これは伊勢流ではないが、
かといって他の 流派でもない」など、何事も正確に伝えようとします。
その心情には様々な背景があるようですが、貞丈の実直さがこれらの本の魅力であり、
また興味深いところでもあります。

貞丈雑記には菓子研究の上でも注目すべき記述が数多くあるそうです。
貞丈の身分は旗本。江戸城の嘉祥の儀式は貞丈にとっても楽しみの一つだったの
かもしれません。

2010年6月15日火曜日

お返し_おうつり扇

人からものを贈られた時に、その容器の中に「お返し」として「紙」(移り紙)を入れたり、また「つけ木」

を入れたりする習慣があった。「沙石集」には「返り引き出物として紙一枚ぞ給わりける・・・」とあるが

これが今の「うつり」なのである・「うつり」とは「名残り」の意味なのである。

またつけ木のことは古くは「硫黄」といった。

「硫黄」とは「祝う」に読みが同じなので、祝う意味から硫黄を「うつり」に用いたのである。

(額田巌著「包み」より)



京都では婚礼があるお宅にご祝儀を持って伺うとその場でお返しをする「おため」という風習があり、その際に紅白の懐紙にこのおうつりの扇を挟んで渡すという風習があるそうです。

おためとは 「お多芽」=「おうつり」のことで、お祝いを下さった方のために、というところからおためと呼ばれているそうです。


おうつり=末広がりにお悦びがうつっていくよう

六本木ミッドタウンに行く時には、必ず虎屋さんに行きます。
和の講座にも時々参加します。
お香の講座、和綴じ本の講座などなど





2010年6月3日木曜日

第1回ワークショップ「古書に見る包み結び」

6月1日 代々木上原 「うつわや」にて

6月・7月・9月、月1回の3回シリーズで、結びと包みについて
お話させていただくことになり、うつわやさんとご縁のある方々、
8名が集まってくださいました。

第1回目は江戸時代の武家故実家、伊勢貞丈の「包結記」の本
から「結び」と「包み」のおはなし。
「包結記」は1764年に「包みの記」をまとめ、のちに「結びの記」と
ともに「包結図説」と呼ばれるようになりました。室町時代から代々
武家の礼法故実に精しい伊勢家に受け継がれてきたものです。

「知識だけではなく、先人たちの事柄に対処する際の知恵。
そういったものを伝授していく気概を示してくれている」と
額田巌先生が書いておられるように、「秘伝」を出版に踏み
切った貞丈の思いが、言葉の端々に感じられます。


復刻版「包結記」



この本には約50種類ほどの結びが紹介され、その名前は、草木・虫・
魚貝・男女名などが大部分をしめ、自然の生命力に対するあこがれを
感じさせられます。

また吉と凶に対する使用上の分類、地位や階級による使用上の
規約など、儀礼的にも高度な世界を十分に伝えています。

花結びという王朝時代の優雅な結びについては「用のない結び」
としながらも、捨てることは簡単だか、役に立つこともあり、こういう
ものも伝えていかなければならない、とあります。

この書にある結びを結んでみました。




講座の中ほど、うつわやさんが選んでくださったおいしいお菓子と
お茶で一休み。お懐紙を吉の折りにして、さっそく用意して頂いた
干菓子をその上に。日本の紙や折りの「用」と「美」と「心」が
何百年経った今も受けがれていることが不思議にも思えます。

作家さんの器に囲まれ、お花がさりげなく飾られたお店でのひと時
は心地よく、「心を豊かにする会」を開きたいといううつわやさんの
思いが伝わります。

折形デザイン研究所では基礎から応用まで様々な美しい折り・包み・
水引の結びを教えていただきました。
デザイナーで構成される折形デザイン研究所の方々の目を通して
日本の伝統的な儀礼文化に触れたことで、私の結びの世界は広がり
ました。

「むすび」をどう伝えていきたいのか、改めて問われるよい機会に
恵まれ、結びが「包む・たたむ」とともに大切な文化であることを
確信し、今後もこのような活動を地道に続けたいと考えています。

7月は「祭りの中の結び」をテーマに、祇園祭をとりあげ、結びに
まつわるお話と、小さな結びの小物作りに挑戦します。