2014年11月5日水曜日

小倉織復元30周年「築城則子‐縞の今」北九州美術館

北九州市小倉の北九州美術館分館へ、
築城さんの展覧会を見に出かけました。
今年は小倉織復元から30年。
その足跡が美しく展示され、今なお新しい
織に挑戦している築城さんの宇宙観を
体験できる素晴らしい展覧会でした。























図録の写真もとてもきれい。
展示の様子も入っています。
(アマゾンにて購入できます)





















昨年春、銀座和光の「築城則子染織展」にあたり、
築城さんの小倉織で訶梨勒(かりろく)を制作しました。
折形デザイン研究所オリジナルの包みを使わせて頂き、
生地を折って結びを施したもの。
生地には鋏を入れず、縫うこともなく、折りと結びだけ
で形を作れるのは、小倉織のしっかりした生地だからこそ。
今回も新作の訶梨勒を美術館に展示して頂きました。

和光も美術館も、私だけの力では展示の叶わぬ場所。
今回も築城さんの縞が私の結びに大きな力を与えて下さった
ことへ、感謝、感謝の一日でした。

(北九州美術館分館にて11月3日まで)


2014年9月4日木曜日

川越氷川神社 「縁むすび風鈴」と「まもり結び」

毎月一回、結びのお稽古で氷川神社を訪れます。
いつ行っても大きな鳥居の向こうには本殿とご神木の深い緑が美しく、
ほっとした気持ちにさせられます。



8月いっぱい飾られていた「縁むすび風鈴」
およそ一万枚の短冊はお祓いのうえ、お焚き上げされました。
大勢の方が参拝に見えたそうです。

川越氷川神社
https://www.facebook.com/hikawa.kawagoe

そして、むすびCaféでは一年分のまもり結びが飾られています。

今年家庭画報、新年号で紹介されました「まもり結び」が
今月、家庭画報の英語版「KATEIGAHO INTERNATIONAL」
でも紹介されたとのこと。
正直、英語版のことは知りませんでしたが、本屋さんでは日本語の
家庭画報近くの棚にありました。



日本のさまざまな文化がとてもきれいな写真で紹介されています。
日本を紹介する英語の勉強にはとても役立ちそうな雑誌です。

2014年8月26日火曜日

伊勢神宮の相生結び

今年初めて伊勢神宮へお参りに行きました。

ウィーン交響楽団で33年間首席チェロリストを務めた
吉田健太郎さんの奉納コンサートに同行することができ
参加者は正装での特別参拝ということで、初めての
参拝は厳かに始まりました。

友人の同級生でもある吉田さんの演奏は能楽堂で
行われ、その柔らかく美しい音色が神宮の森に優しく響き
とても清々しいひと時を過ごしました。

伊勢神宮 内宮にて


























神宮の結びは、相生結びでした。
この結びは祇園祭の鉾飾りにも多くみられます。
しかし、水引の相生結びはこれとは違いますし、
江戸時代の本にある相生結びも形は違います。

同様に初めて参拝した京都の下賀茂神社
ここでは相生の社が。





















お能の「高砂」では「相生の松」の言い伝えが謡われ、
長寿や老夫婦の睦まじさを称えます。

水引の結びでは、やはりおめでたい結びとして
相生結びには真・行・草の三種類があります。

実用的な相生結び。
伊勢神宮での厳かな相生結び
そして、おめでたい包みを結ぶ、相生結び

相生の松は永遠に尽きない和歌の道を表して
いるといわれます。
伊勢神宮の遷宮も、いろいろな説があるようですが
遷宮を行える社会の継続を願ったものという解釈も
あるようです。

神社はいつの時代も、社会の平穏を願い、災害の多い
国の知恵として生まれてきたように思います。

そして結びも人々の願いに静かに寄り添ってきました。


2014年3月3日月曜日

上巳の節供

桃の節句の起源は中国の水の精霊に対する祭りで、それに日本の祓の信仰が
結びついたといわれています。

折口信夫はひな祭りを「古代の禊ぎの名残」とし、古代生活の名残を留めるが
故にこれらの「しきたり」には「やすらひ」を感じるのだろうといっています。
しかし民俗学者の吉野弘子さんは、ひな人形を蛇の脱皮を模したものと考え
蛇の脱皮に子供の成長を託して祈った風習がひな祭りに発展したとし、そこに
罪の意識などなかった、としています。

いずれにしても、再生を願うものであることは確かで、古くから磯遊び、浜降りなどと
言われる風習は全国各地に残っていて、この日は古くから水に関する行事が行われていました。


貝桶の結び(伊勢貞丈「包結記」より)

貝を食べるのは磯遊びの名残と言われますが、誰もがひな人形を飾ってお祝いする
ようになったのは江戸時代半ばを過ぎてからの事でした。
そして、婚礼道具の一つとして大切にされていた貝桶の結び方は、江戸時代の包み
結びの本に詳しく書かれています。

上の写真の赤い紐は「とんぼ結び」で左が雄、右が雌のとんぼを表しています。
そして緑の紐も同様に貝桶の結びですが、これは「うろこ結び」と言われやはり
左右対称に結ばれています。
うろこは水を連想させ、実際その結び目の形も三角形で「水」との関わりを感じさせ
ます。

種々の花結びより「檜扇(ひおうぎ)の結び」
上の絵を参考に結んだもの

もう一つ結びの事で言いますと、女雛が手に持つ檜扇に付いた結びがあります。
これは6色の色や紐の長さが決まっていて、にな結びを絡ませながら結びます。
思いのほか長い飾りで、実際には扇はたたんでこの紐をぐるぐると巻きつけ
15センチくらい垂らして手に持ちます。


原久美子さん制作の貝雛と魔よけの赤い紐


何気なく見ていると気が付きませんが、お節供の飾りには思いのほか結びが
使われ美しいわき役をつとめています。
雛段を飾るのが難しくなってきましたので、このような貝雛や、お雛様にまつわる
結びなどに思いを託すことも一つの方法かなと思います。

ちなみに島根県では男の子も3月3日にお人形を贈るそうです。長男には座った
お人形。これは家を継ぐというところから。次男は独り立ちしてほしいという願いを
込め、立ったお人形。

長男用のおひなさま
次男への贈り物

7歳までは神の子と言われた江戸時代。結びは通過儀礼の中で象徴的に使われることがよくみられ、子供への思いは様々な形となって残されています。
それらを紐解きながら思いを結ぶ結びを考えていくのは楽しい作業です。
それぞれの時代に名もない人々によって伝承されてきた結び。お節供はそんな結び
の事を思い出させてくれます。